原稿トピックス

以下の文章は、2020年度奨学生の感想文から特徴的な内容だけを取り出したものです。

奨学生たちの真摯な態度と心からの感謝の気持ちを汲みとっていただければ幸いでございます。

 

高校生

 

大学進学を決心しましたが、家庭の経済状況は決して良くなく、厳しいのは確かです。より勉学に励むために高校生の間にアルバイト等をして、今回いただける奨学金と合わせて、大学生活のために有益に使用したいと思います。(大阪、女子A)

 

お恥ずかしながら、今回初めて在日朝鮮学生支援会という団体があることを知りました。私たち在日朝鮮学生を、こんなにも多くの方々が支援してくださっていることについて、私自身感じることが多く、誠に嬉しく思います。私は奨学金というものをいただくのも初めてで、実際にそのお金を自分の手で受け取ってみた感覚は、言葉では表せないほどの深い思いでした。見ず知らずの私を支援して奨学金までくださったことは、人生の大きな励みとなります。(大阪、女子B)

 

私は寮生活をしながら朝鮮高校に通っているので、母親は負担が大きかったと思います。母親一人で兄弟4人を育てている家庭環境で、経済的に余裕はありませんでした。私は将来、同胞社会のためになる仕事で生きていきたいと思っています。そのためにも奨学生という名に恥じないよう、一生懸命勉強し多くのことを学んでいきたいと思います。(広島、男子A)

 

奨学生採用は予想外のことで最初は少し驚きましたが、今はただただ感謝の気持ちで一杯です。高校無償化が適用されていない朝鮮学校に通いながら、学力向上のため塾にも通い、それだけ大きな負担を両親にかけ非常に申し訳なく思っていました。今回、奨学金を頂くことによって、両親の負担を少しでも減らすことができ、今後、支援への恩返しができるように勉強を一層頑張ろうという覚悟を持つことができました。大学進学後は、海洋生物の勉強をしたいと思っています。(京都、男子B)

 

私の家は、父が単身赴任をしており、東京では母が夜遅くまで仕事をしながら兄弟3人の面倒を見るという非常に難しい状況が6年間続いています。また、昨年の2月から流行している新型コロナウイルスの影響による外出自粛、経営不振によりいつもよりも厳しい経済状況に陥っています。こんな中で今回の奨学金制度の話を聞いて、少しでも両親の負担を減らせると思いすぐに志望しました。奨学金をいただけることで、これからの決意をかためる良い機会となり、自分を一段階成長させる機会になりました。(東京、男子C)

 

大学生


私が4歳の時に父が病気で働けなくなり、難しい状況が続きました。そんな中、今年の1月に母も倒れ満足に働けなくなりました。本来ならバイトをしてお金を稼がなければいけないのに、コロナ禍でバイトができない状況にありました。しかし、今回の奨学金制度の恩恵で自身のやりたいこと、やるべきことに全力で取り組めるようになります。これからも感謝の気持ちを忘れず勉学に一生懸命励んでいきます。(女子K)


経済的に余裕がなく今年度の学費を払うのが困難だった中、この奨学金のおかげで勉学、専攻分野の研究により集中して励むことができています。まだバイトなどは継続しいきますが、親子共に精神的に余裕が持てましたし、私自身バイトを減らすことができたので本当にありがたいです。近代IT人材の需要が急上昇し重要度が増している中で、他に埋もれないためにはオリジナリティを見つけ、自分ならではの価値を見出しアピールしていかなければいけない時代です。在日朝鮮人というアイデンティティを持つ私だからこそできることがあり、解決できる問題があると思っています。特にプログラミング、IoT分野などの同胞社会や教育現場で需要のある分野を重点的に勉強し、実力をつけていきたいと思っています。また、今後はこの奨学生に選ばれた人々の模範にもなれるように頑張っていきます。何も成し遂げていない、頑張っていない人が貰うより、自分がやるべき事を探し学び頑張っている人が貰ってこその奨学金だと思うからです。(男子S)

 

私は今まで、自身が在日朝鮮人であるがゆえの様々な心の痛む経験をしてきました。そしてこのような経験は、今もなお続いています。高校無償化制度から朝鮮高校が除外され、その適用を求めて2013年からは裁判闘争が始まりましたが、結果は不当判決ばかりでした。それだけでなく、学生たちを的にしたこのような差別は、ついに幼い子供たちにまで及ぶこととなりました。2019年から始まった幼保無償化制度から朝鮮幼稚園が除外されました。何も知らない無邪気な子供たちがこのような差別を受けるのは、最も心が痛みます。さらに日本政府は、世界中を脅かすコロナ禍においてさえも、このような差別を繰り返しました。学生支援緊急給付金制度から朝鮮大学校の学生を除外したのです。また、さいたま市の保育園にマスクが配布された際、当初、朝鮮幼稚園には配布されませんでした。日本政府によるこのような差別は、在日朝鮮人に対するまぎれもない人権侵害であり、私たちの尊厳、ひいては命までをも軽視するものです。私は今まで、このような痛みをたくさん経験してきましたが、その反面、自身が在日朝鮮人であるがゆえの、とても大切なものを学びました。弁護士として、この日本社会にはびこる不条理な差別を是正し、同胞たちの笑顔を、そして民族の尊厳を守っていけるような人間になりたいです。現在、日本政府の在日朝鮮人に対する弾圧が勢いを増していく中で、私たちには権利闘争をより一層力強く行っていくことが求められています。私は、その権利闘争の最前線に立ち、同胞社会の明るい未来を切り拓いていきたいと思っています。(女子K)

 

新型コロナウイルスの影響で、アルバイトにも行けず、親の仕事も旅客運送業で経済的に苦しく、今回奨学生に採用していただいたことに感謝の意を表します。先日、信用組合の本店と商工会に実習に行きました。実習期間を通して、どちらも同胞にとってなくてはならない機関、同胞社会の経済的支柱であると改めて実感しました。卒業後、経済機関に就職し、同胞社会のため活躍できるような人材となるべく精進してまいります。(男子H)

 

私の親は、兄弟4人を学校に送るために日々忙しく仕事をしています。現在、大学には私と妹が在学中です。いくら経済的に厳しくても子のために働く親を見て、何か自分にできることはないかと模索していました。私の貢献とは学生の本分である勉学に時間を費やすこと、そして明確な結果を残すことです。しかし、そのためには専攻書籍や史料の購入代、学習会への参加費など経済的に難しい問題がありました。そのような中で今回、貴財団が奨学事業を行っていることを知り、大変うれしく思いぜひ申請したいと思いました。今回のご支援により自身の研究、勉学により一層励むことが可能になり、これからの研究の展望を考えると自然と胸が躍ります。授業を通して、軸のある歴史観を持つ人のみ明るい未来を切り開けるということを学びました。それは私の人生の指標になり確固たる軸になりました。以降、歴史観を後世に伝えることが私の内的な希望となりました。その手段として歴史を学ぶために大学に、その後は大学院への進学を希望しています。(男子R)

 

私は母が朝鮮学校の教師をしており、家庭の事情によって朝鮮学校へ通う兄弟三人の学費を支払うことも厳しい状況にありました。その為、大学に入学してからは、勉学とアルバイトを両立させなくてはならない生活が続き、どうにか両親への負担を減らせないものかと思っていました。しかし今回この奨学金制度のお話を耳にし、とてもありがたい制度に感銘と感動をうけ、少しでも勉学に励めるよう応募させていただきました。(女子K)

 

大学院生

 

自ら望み決断したことですが、三十路目前に職を離れて6年ぶりに学生に戻り、アルバイトを週9でこなしながら勉強するのは簡単ではありませんでした。そのような中、貴財団に奨学金を授与していただけることにより、勉強と研究の環境を改善でき、これからより一層勉学に励み優秀な人材として準備する決心を強く持つことができました。また、私の両親は朝鮮学校の教師をしていて経済状況が厳しく、兄が病気を患い療養中であるので、家族に迷惑をかけるわけにもいかず、少しでも自立した生活と勉強をできるようになることをありがたく思っています。私は来春から大学院に通い、資本主義を乗り越える思想・理論を研究します。現在在日朝鮮人をとりまく環境は混迷を極めており、そこには朝鮮半島の分断、帝国主義/植民地主義、人種差別や女性差別などあらゆる不条理が横たわっています。私はそれらと資本主義が不可分のものであり、したがって在日朝鮮人の「真の解放」のための一つの糸口が、資本主義を乗り越えることにあると確信を持っています。現在、本格的な研究をしていくための基礎を固め、英語とドイツ語を習得することに集中しています。大学院に進学して実践的理論を体得し、在日朝鮮人のために大きな役割を担える人材となるべく自身を鍛えていきたいと思います。(男子K)

 

私は、今年度までに博士前期課程を修了し、来年度からは博士後期課程へと進学することを当面の目標として、アルバイトで得られる収入で研究費や生活費を賄いつつ、授業料にもあてるつもりでいましたが、この奨学金のおかげで、これらからはより一層研究に専念することができるようになりました。私が目指す研究者像は、人類・文化・民族・国家や社会問題に至るまで、それらが現在までいかに形成されたのかを、科学的根拠をもって教えることのできる歴史研究者です。また、科学的歴史認識と方法を教育という場を通じて、いかに学生たちに修得させるかという問いに常に立ち向かう歴史研究者です。これからも「教育は長い年月を通じて蓄積された人類の叡智へと人びとをいざなう営みであり、現在学ぶ過程にある若者への投資は、即ち人類への直接的な貢献となります。」という、在日朝鮮学生支援会設立者故・朴英雄前代表理事の理念に反することのないように、歴史教育の発展に寄与すべく、まずは歴史学の博士号取得を目指して日々邁進して参ります。(男子J)

 

私は、今年度から朝鮮大学校研究院で言語発達や言語教育について学んでいます。在日朝鮮人運動と民族教育の発展に貢献する人材になるために入学し、日々のほとんどの時間を学業・研究に費やすべき研究院の一員ですが、離れて暮らす両親に学費や生活費などで経済的負担をかけたくないという思いから、アルバイトもしながら生活しています。しかし、学費や生活費、また研究のための資料の購入費など、研究院生としての生活を自力で賄うには、週に数回のアルバイトでは十分ではありません。また、できるならばアルバイトの数は減らし、学業により多くの時間と力を注ぎたいと思っていました。今回ご支援を受けられるおかげで、経済的不安はとても和らぎ、一層学業に専心できるようになったことをとても嬉しく思っております。支援してくださる皆様のご期待に応えられるよう、気を引き締めて研究に邁進しようと決意を新たにしました。(女子H)